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海洋プラスチック問題の解決への道~八千代エンジニヤリングの取り組みを紹介~

こんにちは!note編集部の藤井です。

これまで海洋プラスチック問題の解説や、海洋プラスチック排出量の削減に関する取り組みをご紹介してきました。海洋プラスチック問題についての理解を深めていただけましたでしょうか?

今回は第3弾として、海洋プラスチック分野の専門家、吉田さんに、当社が取り組んでいる解決策についてお話しいただきました。


これまでの記事についてはこちらをご覧ください。

プロフィール

吉田さん(海洋プラスチック分野の担当)
業務内容:海洋プラスチック分野の事業検討・開発
経  歴:2008年4月 八千代エンジニヤリング 入社、環境計画部配属
    2019年4月 東京理科大学大学院 理工学研究科 土木工学専攻入学
     2022年3月 東京理科大学大学院 理工学研究科
           土木工学専攻 博士後期課程修了
     2023年7月 スマートシティ課配属 
      海洋プラスチック分野の事業検討・開発を担当

1.海洋プラスチック問題への貢献度を定量的に評価するサービス「RIAD」の製品化

前回のnote記事「海を守ろう!海洋プラスチック排出量と削減への取り組み」では、陸域から海域へのプラスチック排出量とその削減策についてお伝えしました。多くの海洋プラスチックごみは、陸域から河川を通じて海に流れ出ることが分かっています(例えば、注1~3) しかし、「どの河川から、いつ、どれだけの海洋プラスチックごみが流れ出るか」については、現在まで詳しい情報がありません。そこで当社では、河川の水面をインターバルカメラで撮影し、画像解析を行うことのできるサービス「RIAD(River Image Analysis for Debris transport)」を製品化しました。このサービスにより、海洋プラスチックを含む人工系ごみの流出量をモニタリングしています。RIADは東京理科大学の二瓶教授と愛媛大学大学院の片岡准教授によって開発され、当社で製品化されています。

1) Lebreton, L.C.M., van der Zwet, J., Damsteeg J.-W., Slat, B., Andrady, A.and Reisser, J.: River plastic emissions to the world’s oceans, nature communications, Vol.8, pp.1-10, 2017.

2) Schmidt, C., Krauth, T. and Wagner, S.: Export of Plastic Debris by Rivers into the Sea, Environ. Sci. Technol., Vol.51, pp.12246-12253, 2017.

3) Meijer, L. J., Van Emmerik, T., Van Der Ent, R., Schmidt, C., & Lebreton, L.: Plastic waste inputs from land into the ocean, Science Advances, Vol.7, Issue 18, pp.1-13, 2021.

「RIAD」についてはこちらをご覧ください。

RIADのロゴマーク
図1:RIADについて

RIADを用いたモニタリングは、これまでに国内で14河川、海外で3河川の実績があります。このモニタリングでは、川から海へ流出する海洋プラスチックごみの時間的変化や、地域特性との関連を分析しています。最近では、太陽光パネルを利用して河川水面の動画データを自動で取得し、解析しています(図2)。

図2:川ごみのモニタリングの様子

2.清掃活動による川ごみ流出量の削減効果の定量化

海洋プラスチックごみの主な発生源は、ごみ集積場からの漏れや、公園のベンチや車からのポイ捨てなどです。これに対する対策として、市民による清掃活動が行われています。最近の研究によると、全国109の水系(注4)のごみ回収量は、2016年から2020年にかけて年間755~1,166トンであり、5年間の平均は932トンです。これは、日本からの海洋プラスチックごみの推定排出量(年間2~6万トン)の約1.6~4.7%に当たります(注5)。当社では、RIADを用いて、清掃活動による川のごみ流出量の削減効果の定量化についても取り組んでいます。もちろん、当社の社員も清掃活動に積極的に参加しています(図3)。

4)水系とは、水源から河口にいたるまでの本川や支川のまとまりのこと。

5) 二瓶泰雄,岡田友萌菜,田中衛: 市民と河川管理者の清掃活動による河川プラスチックごみ回収量の把握, 第57回日本水環境学会年会, Vol.50, 2023.

図3:地域の方々との清掃活動

3.海洋プラスチック問題について理解促進するために外部講演を実施

海洋プラスチック問題はメディアによる取り上げもあり、広く認識されるようになりましたが、未解明の点が多く、世界中の研究者や事業者が解決に向けて取り組んでいます。
この問題を解決するには、市民との協力が欠かせません。そのため、私たちの会社では外部講演を通じて啓発活動を行っています。
当社の実績は下記のとおりです。

  • 【中学校での授業】
    北海道、東京、静岡、香川の各地での中学校にて、海洋プラスチック対策として「私たちだからこそ出来る事」を考えていただく、きっかけとなる授業の実施

  • 【イベント登壇】
    2023年5月21日に開催されたG7(主要7カ国首脳会議)、香川・高松都市大臣会合関連イベント『瀬戸内オーシャンズX海からの声をきこう』にて、降雨時における陸域から河川への海洋プラスチックごみの流出のしやすさを見える化したマップ(海洋プラスチックごみポテンシャルマップ)のご紹介

  • 【セミナー開催】
    2023年10月26日に当社主催で開催した『「ごみ」を「資源」に! 資源循環セミナー』では、環境やシビックテックの分野に特に関心の高い方々に対して、今後の具体的な行動を考えるきっかけとなる内容をご紹介

講演後には市民の方々と意見交換を行い、彼らの「近くの河川を綺麗にしてほしい」という声が、私たちにとって新たなアイディアを考える良い機会となっています。これは非常に有意義な時間です。

イベント登壇の様子

4.さいごに

海洋プラスチック問題に取り組む上で、私たちだけでは限界があるため、多くのステークホルダーと連携を図っています。さまざまな思いを持つ人たちが集まり、協力することで、自信とやる気が生まれ、確実に前進していると感じます。私たちは、「社会にどのように貢献しているか」「何ができて、何が分からなくて、何が必要か」を意識しながら行動することを心がけています。


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