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未来を形作るテック!行動変容を通じた社会課題解決

こんにちは!note編集部の藤井です。

社会をより良くするための技術、シビックテックと行動変容テック。
前回の記事では、シビックテック分野の専門家でもある柴田さんに市民参加や公共の問題解決を促進するための技術「シビックテック」についてお話しいただきました。
今回は、人々の行動や習慣をポジティブな方向に変えるための技術「行動変容テック」についてお話しいただきます。

日々変化する社会の中で、これらのテックがどのように私たちの生活を豊かにし、より良い社会を築くための鍵となるのでしょうか。

前回の記事はこちら


プロフィール

柴田さん(シビックテック・サーキュラーエコノミー分野の担当)
業務内容:シビックテック・サーキュラーエコノミー分野の事業検討・開発
経  歴:2007~2021年 グローバル企業 環境部署の責任者として従事
     2021年9月 八千代エンジニヤリング入社
     2023年7月 開発推進部配属
     シビックテック・サーキュラーエコノミー分野の事業検討・開発                   を担当

1. 行動変容とは

“社会課題”と言われて皆さまは何を思い浮かべますでしょうか。少子高齢化、自然災害、環境問題、治安・・・。最近では物価高騰でしょうか。社会課題は複雑化し、リスクは増大しています。世界経済フォーラム(World Economic Forum)の2023年レポートでは、短期(2年)と長期(10年)のグローバルリスクを以下のとおりランキングしています。

表1 重大なグローバルリスク

出典:World Economic Forum The Global Risk Report 2023 18th Edition(https://www3.weforum.org/docs/WEF_Global_Risks_Report_2023.pdf)

社会課題の解決には、政治、政策、技術、経済力など、様々なことが必要です。ただし、これらを動かすのは全て市民です。したがって、これらに加え、市民による行動変容が必要不可欠となります。

「行動変容」について本記事では、行動を自主的に変えること、更には変えた行動を継続することを指します。

Aをしていた    ⇒(Aを止めて)Bをはじめる
Cをしていなかった ⇒ Cをはじめる

法規制や罰則、極端な例では独裁国家における“恐怖”で“強制的に”人の行動を変えることもありますが、本記事では対象外としたいと思います。
また、お正月に「今年は(今年こそは)〇〇をしよう」と新年の誓いを立てたことがあるかと思います。1月は頑張ってみたものの、2月になるころにはすっかり実行しなくなったなんてことも・・・。行動変容は「継続する」という概念を含む方が良いようです。

さて、上述の「新年の誓い」のように、人が行動を変容しようとするきっかけ・動機はどのようなものでしょうか。

・タイミング :新年、新学期、新事業年度、誕生日
・環境の変化:入学、転職、引っ越し、結婚
・学習、情報:気候変動の深刻さを知り省エネをはじめた、健康診断結果を               知り運動をはじめた
・誘因:家族から勧められた、みんなやってそうだから
・損得:お得だから、儲かりそうだから、やらないと損

行動変容のきっかけ・動機はまだまだあると思いますが、これら行動変容のきっかけや動機づくり、あるいは変容した行動を継続する仕掛けには、様々な手法が存在しています。

2. 行動変容の手法例

行動変容につながる手法例をいくつか取り上げます。

(1)プライシング・インセンティブ

スーパーで消費期限の迫ったお惣菜やお弁当。「〇〇%割引」に惹かれて購入(通常品ではなく消費期限の迫った商品を選択)した経験をお持ちの方は多いと思います。マイナンバーカードの取得をしていなかった方(取得手続きが面倒、取得のメリットが分からない、などの理由でしょうか)が、政府によるポイント付与により取得が大きく進みました。

(2)ナッジ

「ナッジ」は聞いたことがあるかもしれません。英語の「nudge=ひじで軽くつつく」から来た言葉で、ちょっとした仕掛けで行動変容を促す手法です。代表的なナッジが「初期設定」です。企画側にとって望ましい方向を初期設定しておくことです。例えばオフィスのコピー機において「白黒印刷」「両面印刷」を初期設定としておくことでコピー費用を抑制することがあげられます。

(3)環境整備

皆さんの日常の歩数はどれくらいでしょうか。厚生労働省の「健康日本21」に拠れば、日本国民の平均歩数は1日6,278歩(令和元年)。目標とする歩数は20~64歳で8,000歩、65歳以上で6,000歩だそうです。
自治体、健康保険組合、健康診断時の医師による問診、所属する企業などの様々な機関が人が歩くことや日常の運動を推奨しています。一方で、このような啓発・教育では人はなかなか行動を起こせない(行動変容できない)のも事実です。

そこで、意識せずとも、ある目的を達成するように環境整備を進めることがあります。先に記載した厚生労働省の「健康日本21」では、「自然に健康になれる環境づくり」を方針に掲げています。千葉大学では、「暮らしているだけで、健康で活動的になるコミュニティ」を目指すWAC(WellActiveCommunity)を推進しています(https://opera.cpms.chiba-u.jp/)。

出典:健康日本21(第三次)推進のための説明資料(厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/content/001158870.pdf)

(4)ゲーミフィケーション

ゲームで使われる要素を取り入れて行動変容を促す手法です。得点、ランキング、仲間・フレンド、報酬、感謝、達成感など、ゲームに夢中になる要素の適用になります。

私が以前、グローバル企業に勤めていた時代、労働安全衛生の責任者を務めていました。労災の削減・ゼロ化が目標で、安全教育を行っていました。座学やOJT(On the Job Training)を実施するものの、参加率や効果に課題がありました。そこで、クイズのアプリを開発。クイズを通じての安全教育を行いました。個人、および所属組織ごとのランキング制度、レベル分け、個人の最上位者には報酬を与えるなどのゲーミフィケーションの活用。事前想定の数倍の参加率と知識の定着を図ることができました。

3. 行動変容テック:テクノロジーを活用した行動変容

前述のアプリのように、行動変容を促すためにテクノロジーを用いた手法が「行動変容テック」です。シビック(市民)が主体となり、テック(主としてITテクノロジー)を活用して社会課題解決に取り組むソリューションツールである「シビックテック」の一つとも位置付けられます。脱炭素に関する行動変容テックになりますが、具体例を2つご紹介いたします。

(1)じぶんごとプラネット
https://www.jibungoto-planet.jp/

国立環境研究所とシビックテックを手掛ける一般社団法人コード・フォー・ジャパンが開発したサイトです。選択式の簡単なアンケートに答えると自分の炭素量(カーボンフットプリントと言います)が算定されます。併せてどのような取り組みをするとどの程度の炭素量削減が出来るかを提示してくれます。

(2)Green Carb0n Club(https://www.city.kawasaki.jp/300/page/0000144270.html

川崎市が富士通と実証実験を進めているアプリです。ゲームをしたり、エコアクションを実践することでポイントが付与されます。ポイントは特定の商品やサービスと交換することができます。

上記例以外にも、様々な行動変容テックが出現しています。

4. さいごに

当社では、長期経営方針(2018-2027年)のビジョン「この世界に、新しい解を。」を掲げており、社会課題の解決に向け、行動変容テックにも取り組んでいきます。次の機会には、当社の行動変容テックについてご紹介できればと思います。

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