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AI交通量計測アプリTRAVIC Portableをリリース「無償で使えるアプリの特長と開発中の次世代TRAVIC」を開発責任者が解説

こんにちは!note編集部の大林です。
以前、AI交通量調査TRAVIC開発者に聞く!「調査の自動化って難しい?」という記事を投稿しましたが、2022年12月に無料アプリとして「TRAVIC Portable」をリリースすることになりました!
このアプリを使うと無償でAIによる交通量計測ができるようになります!
今回はアプリリリースを記念して、「TRAVIC Portable」開発責任者にインタビューを行いました!

開発責任者

TRAVIC Portableの特徴

大林:前回の記事“AI交通量調査TRAVIC開発者に聞く!「調査の自動化って難しい?」”で交通量調査自動化のトレンドやTRAVICの開発経緯についてお伺いしましたが、今回リリースしたTRAVIC Portableの特徴について教えてください。

戸谷:今回リリースした、TRAVIC Portableでは、特徴として「TRAVIC」のAIによる車両の認識と走行軌跡を追跡する技術を活用し、Androidスマートフォンのカメラを用いた「リアルタイム計測機能」、撮影済の動画から計測できる「録画データでの計測機能」の2通りの交通量計測が可能となっています。また、TRAVIC 同様の7つの車種区分(大型貨物、バス、小型貨物、乗用車、二輪車、自転車、歩行者)で交通量を計測することができます。
受託解析サービスとして提供しているTRAVICでは、お客様から動画データをいただき、当社で解析処理をして、お客様に解析結果をお渡しする流れになっていましたが、TRAVIC Portableではお客様のスマートフォンにアプリをインストールいただき、お客様のスマートフォン上でAIを使った交通量計測が可能になり、動画撮影から交通量計測結果が出るまでの時間が大幅に短縮できるのも大きな特徴です。また、交通量調査は同日に複数の箇所で一斉に実施するのが一般的で、AI計測が必要な大量のビデオデータを高速に処理する必要があります。スマートフォンであれば、1台数十万円する高性能なパソコンやワークステーションと比べて安価に購入することができるので、少ない費用で並列処理を実現することができます。精度や解析速度もワークステーション版と同等に仕上がっています。

菅原:スマートフォンでリアルタイムに計測できることのメリットは2つあります。画像データを残さないことからプライバシーの面で問題がないこと、また、交通量計測が本当に問題なく行われているのかをモニタリングできるという点です。

スマートフォンアプリの開発経緯

大林:AI交通量計測はクラウドサービスが多いなか、なぜスマートフォンアプリで交通量計測なのかと思われた方も多いと思いますので、スマートフォンアプリの開発経緯について教えてください。

菅原:TRAVICの活用シーンを検討するなかで、当初はエッジデバイス(監視カメラなどのIoT機器)など組込機器での活用を検討していましたが、スマートフォンであれば比較的安価な既製品でも通信機能があり、さらには多くの方がスマートフォンを保有しています。新たに専用のエッジデバイスを開発するよりも、スマートフォンアプリとして開発したほうがより多くの方により手軽にご活用いただけるため、AIを手軽に体験いただけるアプリとして研究開発を開始しました。研究の結果、一定以上のスペックのAndroidスマートフォンであれば高い精度で交通量計測が可能であることがわかり、研究成果をベースに今回のTRAVIC Portableのリリースに繋がりました。

TRAVIC Portableを無償提供する理由

大林:今回、TRAVIC Portableを有償提供ではなく無償提供する理由について教えてください。

戸谷:TRAVICの受託解析サービスを実際にお客様にご利用いただくなかで、実際に交通量調査を実施されるお客様から、AIを活用した調査を実施するためには調査員と同数程度のカメラを設置する必要があり、設置作業をするスタッフやカメラが盗まれないよう監視や巡回するスタッフが必要となり、さらにAIを活用した映像解析費用もかかるため、AIを使うと高くなるといった意見を多くいただきました。現状、AIを活用してもスタッフ募集のためのコストなどが削減できる程度であまりデジタル活用のメリットをご体感いただけていない実態があります。そのため、AIを活用した調査を実施することでデジタル活用のメリットを体感いただくことを目的として、今回TRAVIC Portableのアプリを無償提供することになりました。RIIPS技術創発研究所で開発中の次世代TRAVICをはじめお客様に多くのメリットをご体感いただけるソリューション作りを進めています。最終的にはお客様とともに調査の設置・撤去以外を無人化できるソリューションを作っていきたいと考えています。

研究開発中の次世代TRAVICについて

大林:現在、研究開発中の次世代TRAVICについて教えてください。

菅原:TRAVICの研究で培った知見をベースに次世代TRAVICの開発を行っています。次世代TRAVICでは、交差点の方向別交通量を高精度で計測する技術の他に、歩行者、自転車、自動車の流動解析についても研究しています。具体的には交通量というボリュームの計測だけではなく、交通流という移動体の位置や速度等の交通特性を分析するためのデータを計測するモデルを開発しています。従来のモデルでは課題となっていたオクルージョン(計測対象の物体が重複する状態)が発生した場合でも高い精度で計測できるアルゴリズムを開発し、さまざまなシチュエーションに対応することができるようになりました。

さいごに

大林:今後AIを活用することで交通量計測はどのように変わっていくと考えているか教えてください。

菅原:将来的には完全自動化された調査やデータ収集・分析が主流になってくると考えています。自動運転の時代になると自動車側にもセンサーをたくさん搭載しますので、最終的には路側カメラでデータを収集しなくても走行する自動車から提供される情報から交通量を把握することが可能な時代が到来します。今後のTRAVICの活用については2つのフェーズに分けて考える必要があります。例えば、フェーズ1は自動運転車と非自動運転車が混在する過渡期における交通調査支援ツールとしての活用、フェーズ2はコネクテッド車や自動運転が普及する時代においてもインフラ側から道路交通状況を把握し、自動車と道路というインフラをデジタル技術で連携して自動運転のフェールセーフ機能を支援するシステムにTRAVICを活用できるようにすることです。

戸谷:日本では人口減少社会にむけた社会課題解決として、スマートシティやスーパーシティなどまち全体をデジタルで高度化させる取り組みや、MaaS、モビリティ分野におけるデジタル活用など、さまざまな分野でデジタル化が進められています。こういった取り組みは、オープンデータによるデータの集め方だけでなく、集めたデータをどう活用するか使い方に至るまで、さまざまな可能性が含まれており、TRAVICのような自動化されたデータ収集ツールの活用シーンが増えていくと考えています。今後もお客様のニーズやご要望のさらに深い部分までお手伝いできるソリューションとして活用していく計画です。