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G20イベントに出展しました~スマートガスネットワーク構想を発表~

こんにちは!note編集部の大林です。
当社は株式会社Atomis(以下「Atomis社」)とインドネシアで行われた「G20研究イノベーション大臣会合」のサイドイベントとして、10月27日~30日に開催された「InaRI Expo 2022(Indonesia Research and Innovation Expo 2022)」に出展し、新たなガス流通システム構想を日本政府ブースにて公開しました。
今回はブースの様子や出展内容について、開発(海外)担当の渡辺さんにインタビューを行いました。

渡辺さん

渡辺さん(事業開発/海外担当)

ブースの様子

大林:インドネシアで開催された「InaRI Expo 2022」ではAtomis社と一緒にブースを出されたとのことですが、いかがでしたか?

渡辺:4日間を通して、ブースには多くの方にお越しいただきました!サトヴィンダー・シンASEAN事務次長(ASEAN経済共同体担当)にもお立ち寄りいただき、構想内容を説明しました。また、学生も多く来場しており、興味を持って説明を聞いていただきました。ブースに来られた方と意見交換をすることで、私自身とても勉強になりました。

サトヴィンダー・シンASEAN事務次長(ASEAN経済共同体担当)の来場
ブースはとても賑わっていました!

出展内容~ガス流通システム構想~

大林:ブースでの展示内容を教えてください。

渡辺:「スマートガスネットワーク構想」について展示しました。本構想はより快適な暮らしを創るため、パイプラインによらないスマートなガスネットワークを構築するものです。
日本で一般の家庭で使用されるガスは、パイプラインを通じて気体のガスが供給される『都市ガス』と、圧縮したガスを詰めたボンベが配送される『LPガス』の大きく2つに分けられます。日本でも都市部を除けば『LPガス』が多く使用されていますが、これにはパイプラインの整備にコストがかかるため、都市部以外では普及が難しいという背景があります。都市ガスは水道のようにコックをひねればガスが出るのでとても便利ですが、LPガスは大きくて重いボンベを各家庭に配送しなければいけません。

大林:確かに、あの大きなボンベを運ぶのは大変ですね。

渡辺:そうなんです。小さいものでも20kg、大きいものでは50kgもあるので、ボンベの運搬は体力的にも大変な仕事です。しかも、ガスをボンベに詰めて運ぶという方式は基本的に約100年間変わっていません。

大林:約100年変わっていないとは驚きです!

渡辺:また、都市ガスとLPガスは、そもそもガスの種類が違うんです。都市ガスの主成分はメタンガス、LPガスはプロパンやブタンです。

大林:メタンとプロパンやブタンでどのような違いがあるんですか?

渡辺:カロリーや比重が違うなどガスとしての性質の違いは色々とあります。でも、使う上での一番の違いは「簡単に液体にできるか?」という点です。メタンはマイナス162℃という超低温にしないと液体になりませんが、プロパンやブタンは低い圧力をかけるとで液体にできます。

大林:LPガスは簡単に液体にして運べるからボンベに適しているんですね。

渡辺:その通りです。液体にしないとボンベに入るガスの量が非常に少なくなってしまうので、メタンガスをLPガスのように容器に詰めて使うのは難しいんです。容器を大きくするか、内部の圧力を高くするしかありません。でも、もしメタンガスをより簡単に扱う事ができるようになれば、可能性が大きく広がります。

大林:メタンにはどのような可能性があるのですか?

渡辺:メタンガスは主に天然ガスから精製されます。天然ガスも化石燃料ではありますが、二酸化炭素の排出量が少なく、もっともクリーンな化石燃料と呼ばれています。また、バイオマスからのメタン生成の取り組みも進んでいますので、メタンは今後より注目されるエネルギー源になると考えています。

大林:そこに目的があったのですね!メタンを活用していきたいという事ですね。でも、どのようにメタンを運ぶのですか?

渡辺:そこに今回ご紹介するイノベーションがあります。Atomis社が開発している次世代高圧ガス容器CubiTanⓇは、多孔性配位高分子(PCP/MOF)※を使用することで、今まで圧縮が難しかったメタンガスをナノレベルでコントロールすることが可能になります。気体をジャングルジムに閉じ込めるようなイメージですが、これが重く大きいガスボンベの小型化・軽量化というイノベーションに繋がりました。
今回G20のエキスポに出展した構想では、八千代エンジニヤリングとAtomis社の共創により、CubiTanⓇを使ったメタンガスの各家庭への配送を実現しようというものです。CubiTanⓇはIoTデバイスによって残容量や容器の位置などを把握することもできますので、「配送の最適化・省資源化」や「残容量把握による利用者の利便性向上」を通じて、パイプラインによらないガスのスマートグリッド構築を実現したいと考えています。

※多孔性配位高分子(PCP/MOF)とは
多孔性配位高分子(PCP : Porous Coordination Polymer)は金属有機構造体(MOF : Metal Organic Framework)と呼ばれ、京都大学高等研究院iCeMS北川進特別教授が1997年に世界に先駆けて開発したものです。金属と有機化合物が規則性を持ち連続的に三次元構造体を形成し、ナノレベルに制御された多孔性を有する物質の総称です。この分子はマルチファンクションを持つのが特徴で、この機能を利用し、幅広い産業での活躍が期待されています。

今後の展開

大林:これは利便性が向上するだけでなく、CO2削減など環境にも配慮された新しいエネルギーネットワークが実現されますね!今後の展開はどのようにお考えでしょうか?

渡辺:ガスは毎日の生活で欠かす事ができない重要なエネルギー源です。今回G20サミットが開催されたインドネシアでも、LPガスが広く人々の生活に浸透しています。一方で、ガスの価格は国際市場の影響を強く受け、必ずしも安定しているものではありません。また、貧困などの理由により、全ての方が望ましいエネルギーにアクセスできるという訳でもありません。
メタンはバイオマスから生成する事ができます。また、これまで利用されずに大気に放出されていたメタンもあります。今回ご紹介したイノベーションにより、メタンを介したエネルギーの地産地消、さらには地方部で生産されたメタンを都市部で利用するなどの取り組みを進めることで、地域の経済的な格差是正にも貢献できればと考えています。

大林:渡辺さん、ありがとうございました!今後がとても楽しみです!

★プレスリリースはこちら
 https://www.yachiyo-eng.co.jp/news/2022/11/post_694.html