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ネイチャー・ポジティブの最前線!SBTs for Natureの目的と方法論

こんにちは、note編集部の鈴木です。

当社は、2月13日(火)に「CDPジャパン共同セミナー:ネイチャー・ポジティブの最前線!SBTs for Natureの目的と方法論」と題し、ウェビナーを開催しました。

本ウェビナーでは、CDPジャパンの榎堀さまをお招きし、「ネイチャーへの取組みの重要性に関する世界の潮流」をテーマに、SBTs for Natureが求められる背景や、CDPが自然の課題にどのように対応しているかについて講演していただきました。

また、当社からはSBTs for Natureの全体像、どのような目標の設定が求められるのか、目標設定のアプローチ等について概説しました。

今回は本ウェビナーの内容について、当社側の資料をもとにSBTs for Natureの全体像や目標を中心にダイジェストでお届けします。

SBTs for Natureとは?全体像を解説

Science-Based Targets  for Nature(以下、SBTs for Nature)とは、企業や関係者が、地球の限界社会の持続可能性目標に沿って行動できるようにするための、利用可能な最善の科学に基づいた、測定可能・実行可能な期限を持つ目標です。

基本的には、自社の経済活動による自然への影響を回避・低減、または自然を復元・再生するための目標を設定することになります。

開発・運営を担っているのは、CDPなど、自然科学や生物多様性を専門とするNGOや研究機関を中心とする、80以上の組織によるコラボレーションである「Science Based Targets Network」です。

SBTs for Natureの特徴は以下の通りです。

  1. 「場所」と紐づいた目標

  2. 目標設定に向けたプロセスの過程でどの種類の目標が必要になるか決まる

  3. サプライチェーン上流の検討が必須

SBTs for Natureが対象とする自然への圧力(左)と課題領域(右)

また、SBTs for Natureが対象とする自然課題領域は、淡水、陸域(土地)、海洋、生物多様性で、現状は企業の直接操業およびサプライチェーン上流が対象のバウンダリとなっています。

SBTs for Natureでは、人間活動による自然への影響の要因をこれらの「圧力カテゴリ」として分類しています。この圧力カテゴリは、SBTs for Natureが対象としている自然課題領域とリンクしています(例えば「水利用」という圧力カテゴリであれば、「淡水」が課題領域)。

(注)IPBESは、生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化する政府間組織(Institute for Global Environmental Strategies)

SBTs for Natureのプロセスとスケジュール

SBTN Guide for Readers Accompanying text for Steps 1-3に弊社加筆・修正

SBTs for Natureのプロセスは5ステップあり、STEP3までが目標設定に関わるプロセスとなっています。以下に、各ステップの概要を示します。

STEP1:
自社の経済活動がどの圧力カテゴリに対して大きな影響を与えているかを評価し、目標設定の対象となる経済活動、課題領域、サイトを特定する。また、各サイトにおける自社由来の圧力の大きさと自然の状態を評価する。

STEP2:
圧力の大きさと自然の状態を踏まえて、目標設定の優先度が高いサイトを特定する。

STEP3:
ガイダンスに示されているアプローチに則り、課題領域ごとに目標を設定する。

STEP4:
目標を達成するための行動計画を策定し、その行動を実践する。

STEP5:
目標の進捗状況をモニタリングするとともに、それを社外に開示する。

これらの5ステップに対し、現在までにSTEP 1、 2および淡水(Freshwater)と土地(Land)のSTEP 3のガイダンスが公開されています。

今後残りステップが順次公開されていきますが、2024年中にBiodiversityとOceanのSTEP 3ガイダンス、STEP 4のガイダンス、STEP 5のガイダンスが公開予定となっています。
また、2024年中にはValidationのプロセスが開始され、設定した目標の申請と検証が可能になります。2025年の直前には、既存のガイダンスの新しいバージョンも公開予定となっています。

SBTs for Natureの目標

現バージョンのSBTs for Natureでは、淡水(Freshwater)で以下の2つの目標、土地(Land)で以下の3つの目標の設定が求められています。

SBTs for Natureにおいて設定が求められる目標

ただし、前述した通りすべての目標を設定する必要があるわけではありません。

例えば、淡水(Freshwater)の目標に関しては、STEP1で実施するマテリアリティスクリーニングにおいて、関連する圧力カテゴリが「重大な圧力カテゴリ」と評価された経済活動を行っているサイトが、目標設定対象となります。

まとめ

  • GHG排出量を対象とした従来のSBTと比較すると、複数の種類の圧力が対象であること、「場所」を考慮する必要があることなどから、SBTs for Natureを設定するために必要な検討ボリュームはかなり大きいと言えます。そのため、長期的なプロジェクトになることを想定しておくべきでしょう。

  • 現在のガイダンスは、企業のさまざまな状況に応じた検討方法や解決策が示されているわけではないため、行き詰ることがあるかもしれません。今後、企業向けのStep by Stepガイダンスが出されるとのことなので、もう少し理解しやすくなることを期待します。

  • 企業によっては現実的に対応が難しい要件があるかもしれません。パイロットプロジェクトや早期申請企業の状況を踏まえて、もう少し要件に柔軟性が出ることを期待します。

セミナー参加者からの感想(一部抜粋)

「きちんと取り組むには相当の労力を要することを認識しました」

「SBTsをめぐる情報を幅広く提供していただきありがとうございました。一部、理解が及ばないところもありましたが、提供された資料をもとに学んでいきたいと思います」

「全体理解が難しいSBTsについて、網羅的に情報を整理、提供いただきありがとうございます。資料をもとに勉強したいと思います」

「そもそものSBTNの内容自体が難しく、概略をイメージするので精一杯でしたが、各ステップで求められる内容など、おおまかに理解できました。どうもありがとうございました」

「SBTs for Natureというものをわかっていなかったので、わかりやすく説明していただきありがとうございました」

今回のセミナーは、今回のセミナーは、過去最多の195名の方々にご視聴いただきました。心より感謝申し上げます。

SBTs for Natureはかなり難易度が高く、これに対応するにはリソースも必要とするという点を少し感じてもらえるように説明させていただきました。

一方で、視聴者の皆さまに「ハードルが高すぎて実装できない」と判断されないようにバランスを取るのが難しいとも感じます。

質疑応答では、たくさんの質問をお寄せいただきありがとうございました。
当日お答えしきれなかったご質問につきましては、一部ですがサステナビリティNaviのホームページにQ&Aを掲載しました。

今後も皆さまのお役に立てるようなセミナーやイベントを開催していきたいと思います。

━━<開催概要>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・テーマ :【CDPジャパン共同セミナー】ネイチャー・ポジティブの最前線!SBTs for Natureの目的と方法論
・開催日時:2024年2月13日 (火) 16:00~17:20
・開催方法:オンライン(Zoom)
・主催  :八千代エンジニヤリング株式会社 サステナビリティNavi
・ご協力 :CDP Worldwide-Japan 榎堀さま
・参加費 :無料
・参加人数:195名
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