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熊本地震と八千代エンジニヤリングの奮闘~南阿蘇鉄道復旧プロジェクト~

こんにちは!note編集部の小林です。
今回は当社が関わった「南阿蘇鉄道全線復旧事業推進プロジェクト」について前編、後編に分けてご紹介させていただきたいと思います。
この前編では、同プロジェクトの概要と熊本地震に直面した関係者の回想をお伝えします!


第一白川橋梁

7年の時を超えて 南阿蘇鉄道全線運転再開

阿蘇外輪山の南側、立野駅~高森駅間のおよそ18kmを結ぶ南阿蘇鉄道は1928年(昭和3年)に営業開始した鉄道省門司鉄道局 宮地線を前身とし、90年近くにわたり地域の交通手段として、またトロッコ列車が走る観光資源として日々運行してきました。 

2016年(平成28年)4月に発生した熊本地震による甚大な被害を受け、一時は全線運休していましたが、同年7月には高森駅~中松駅間が部分運転再開、そして7年の時を超えて、2023年には中松駅~立野駅間が復旧し、7月15日に全線運転再開となりました。

一般社団法人南阿蘇鉄道管理機構 津留専務理事

「南阿蘇鉄道災害復旧調査の結果、復旧費用は概算で65~70億円、復旧完了までの見通しは5年と公表され、工事の発注は南阿蘇鉄道で行うことになりました。しかしわれわれはこれまで鉄道一筋でしたので、復旧工事を発注する経験がありませんでした。八千代エンジニヤリングさんには調査から関わっていただいていましたので、安心して相談しながら工事を進めていくことができました。しかし第一白川橋梁の設計においては、下部工と上部工とで別々に進められていて、 互いに調整ができていない状態に陥ってしまいました。一日も早い復旧を願う身としては、歯がゆい思いが強くなり、 改善してもらうように各社に要請しました。」

            一般社団法人南阿蘇鉄道管理機構 津留専務理事


九州支店 高山さん

地元の熱い情熱を糧に

「当社は、復旧事業マネジメント業務と第一白川橋梁の架け替えを含めた設計業務を行いました。工事着手から5年、工期内に無事竣工を迎えられたことが何よりの喜びです。また100年近く前に完成した橋梁を架け替えて、同形式のものを後世に引き継ぐことができるということは土木技術者として大変感慨深いものがあります。そして何より、地域の公共交通機関であり地域の活性につながるインフラに関わることができたこと、現場で地元の熱い情熱をダイレクトに感じながら業務に携わることができ、誇りに思うとともにこのような機会をいただいたことに心から感謝しています。第一白川橋梁は、「令和4年度土木学会賞田中賞[作品部門]」 を受賞しました。南阿蘇鉄道さまをはじめとした工事に関わる全ての皆さまの力の結集により 受賞できたのだと、改めて思います。全ての関係者のご協力に深く感謝申しあげます。」
                         九州支店 高山さん

SLが走る第一白川橋梁/南阿蘇鉄道提供

土木学会選奨土木遺産の復旧

両岸が切り立った立野渓谷に架かる第一白川橋梁は、国内でも実績の少ない橋梁形式である2ヒンジスパンドレル・ ブレースド・バランスドアーチを採用しており、1927年(昭和2年)に完成しました。先人たちの貴重な建設技術とその優れた景観美から、2015年(平成27年)に選奨土木遺産に選出され、南阿蘇鉄道を象徴する存在でした。 熊本地震の影響により、右岸と左岸の両側から橋の中心方向に力がかかり、そり上がりが生じるなど異常な変形が生じました。複数の部材が損傷を受けており、架け替えによる復旧が計画されました。新しい橋は、耐震性能を向上させることはもとより、旧橋の構造形式・部材の断面寸法・色を踏襲し、震災前の景観美を復活させることをコンセプトとして設計され、工事が進められました。

熊本地震の被害の様子/南阿蘇鉄道提供

何があってもこの鉄道を残す

「2016年(平成28年)4月14日、熊本地震の前震が発生した時、私は出張で東京にいました。翌日すぐさま熊本に戻り、全線を点検、列車運行に支障はないという判断で翌16日の始発から通常に運転する予定でした。その矢先、本震が16日の未明に発生しました。 夜明けとともに点検に向かいましたが、強烈な余震が続いており、山肌が崩落する様子も目 の当たりにしました。壊滅的な光景を前に、まさに唖然とするしかありませんでした。そして、 復旧に結構な時間を要するであろうということを瞬間的に感じました。毎日必要とする方がいる交通手段を止めるということは、われわれ鉄道マンにとって何よりもつらいことです。 「何があってもこの鉄道を残す」という思いで、翌5月の緊急取締役会において全線復旧が決議されましたが、問題や課題は山積し、復旧への道のりは遠いものでした。」

            一般社団法人南阿蘇鉄道管理機構 津留専務理事

後編へつづく