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「なぜ今、研究・開発に取り組むのか?事業につながる研究・開発とは⁉」トークセッション①開催報告

八千代エンジニヤリングは社会課題を解決する新しい解を生み出すために、「研究・開発」に注力しています。「研究・開発」を行っていることについて当社の社員はどう感じているのか、またどのような想いで行っているのか議論しました。
トークテーマは「なぜ今、研究・開発に取り組むのか?事業につながる研究・開発とは⁉」です。

コメント 2021-09-24 105221

モデレーター:大林(事業開発本部 開発推進部)開発担当、入社7年目
パネリスト:天方(技術創発研究所)研究統括、入社25年目
      植田(事業開発本部 開発推進部)開発担当、入社22年目
      山本(事業統括本部 国内事業部 機電部)技術担当、入社13年目
      岩合(事業統括本部 海外事業部)技術担当、入社4年目

◆パネリスト自己紹介!

大林:こんにちは、皆さん緊張されていますが、今日は楽しく熱くお話ししていきましょう!まずは自己紹介からお願いいたします。

岩合:海外事業部の岩合です。主に電力分野のJICA案件を担当しています。海外事業部でも常に最新のトレンドや技術にアンテナを張りながら業務に取り組むことは大切だと思っています。このトークセッションでは日々の葛藤や想いも含め、少しでも理解を深められたらと思っています。

山本:国内事業部/機電部の山本です。主に水門やトンネルの機械設備の設計を担当しています。開発事業についてもアイデアを投稿したり、私自身は前向きな姿勢で捉えていますが、技術部署(主に公共事業を担当している部署、以下「技術部署」)を代表して色々なことをお話し出来ればと思っております。よろしくお願いいたします。

植田:事業開発本部/開発推進部で開発を担当している植田です。入社して22年目となりますが前期までは4年間、経営企画本部に所属していました。今期からは開発事業を推進させることに従事しており、今日も張り切って議論に参加できればと思っております。

天方:技術創発研究所の天方と申します。入社してからは九州支店で河川やダム計画を担当し、8年目のときに2年間、国土技術政策総合研究所(国総研)のダム研究室に出向しました。戻ってきてからは河川部に所属し、5年前から研究・開発に係る部署に席を置いています。個人的に深層学習の分野に興味を持っているのですが、研究所の所長を務めさせて頂いていることもあり、今は研究所のマネジメント業務を主に行っております。本日はよろしくお願いいたします。

◆なぜ当社が「研究・開発」を行うのか

大林:早速ですが技術部署の若手社員である山本さん・岩合さんから「研究・開発」についての疑問など、何か聞いてみたいことはありませんか?

山本:従来の建設コンサルタント(以下、「建コン」)業務が企業価値を社会に対して発揮していく活動であり売上に直結するのに対し、「研究・開発」は基本的にはその売上を原資とした『投資』であることに、社内でも認識や意見の差があると感じています。そのうえで当社が「研究・開発」を行っている意味について、天方さん、植田さんはどのようにお考えですか?

天方:私が入社した時、当社には「技術部署」しかなく、技術を売りにしている会社が「研究」を行っていないことに、かねてから疑問を持っていました。ただ、公共事業の売上だけで十分利益は確保できているし、それでもいいのかなと思い仕事を行ってきました。公共のコンサル業務に携わって数年、国が技術開発をしてそれに従って社会資本整備を行っているだけでは社会課題の解決を十分に出来ていないということに気が付きました。私たちは社会資本整備に携わる人間として「傍観者」ではいけない、自分たちが技術研鑽をして解決策を探っていく必要があると思っています。

植田:当社では技術部署が行っているコンサル業務で十分な利益を確保できているからこそ「研究・開発」を行うことができる恵まれた環境だと思っています。「なぜ研究・開発を行うのか」ということにつながると思うのですが、技術部署に所属している山本さん・岩合さんは10年後、30年後も今と同じ仕事をやっているイメージは湧きますか?

岩合:難しいですね。日本の人口も減少しており、経済も縮小していくことが予想されるなかで新しいことに挑戦していかなければならないという漠然としたイメージはあります。また新型コロナウイルス感染症が流行し、私が行っている海外事業でも当分の間海外渡航ができないことから、業務に大きな支障が生じました。そのような状況に陥ってはじめて、目の前にある業務はこれまでの積み重ねによる既得権益であり、特定の条件が満たされ環境が整っているからこそ成立しているのだと気が付きました。どんな状況になったとしても、そこに適応できる事業を行っていく必要があることを感じました。

植田:JICA案件であるODAの今後の見通しについて、どう感じていますか?

岩合:個人的な見解ですが、ODAはここ10年、横ばいとなっており、他国も途上国に進出しているので日本が強みとしている分野とそうでない分野で差が大きくなるのではないかと思います。私が携わる電力の分野も数年前と比較して1件当たりの事業費が半分くらいになっており、これから先に不安は感じています。

大林:一方で当社はコロナ禍にもかかわらず前期は業績好調でした。本当にこの先公共事業は減っていくのか、実感を持てない部分もありますが、いかがでしょうか?

天方:今は社会資本整備も大方整っており、災害等の影響もあり突発的に公共事業への投資が増えているだけだと思います。技術者単価も上がっていますが、あくまで政府の意向なので、いつ変わってもおかしくない状況だと思います。私は、どんな変化にも対応できるように自分たちで土台を整えていかなければならないと危機感を感じています。

山本:私もこれから先、人口が減少していくなかで公共投資は減っていくと思っています。このような背景を踏まえ、当社が「官公庁業務の強化」と「新しいビジネス」の2つを展開していくなかで、それぞれをうまくバランスをとっていくことが大切だと思います。

◆社会課題の解決のために

天方:「世界は不確定性が高まっている」と言われていますが、「不確定性」は目に見えないものですよね。海外で「不確定性」を指数化したものがあったので紹介します(下図)。1998年以降、リーマンショックや紛争、コロナで指数がどんどん増加していることが分かります。

天方さん図

(引用:https://fred.stlouisfed.org/series/GEPUCURRENT)

なぜ「不確定性」が高まっているかというとグローバル化に伴い自分たちの一挙手一投足が世界につながるといった状況=つながりすぎる社会になっていることが要因だと思います。下図は「The Ecosystem of Wicked Problems(邪悪な問題の生態系)」の参考です。
「つながりすぎる」社会では、単独の企業行動が様々な分野に波及します。そのなかには当然公共性の高い活動や気候変動などに影響を与えるもの・与えられるものがあります。当社は、社会課題解決をモットーとする社会貢献性の高い会社なので、これだけ社会課題解決のムーブメントが高まるなか、その存在感・影響力を増していかなければなりません。ただし、「つながりすぎる」社会において従来のテリトリーカバーでは貢献性を発揮できず、会社そのものがもっと大きくなっていかなければならないし、国がやれと言う内容だけでは対応不十分で、それとは別に自分達はこう考えるというアイデンティティが必要だと思います。今取り組んでいるのはそのための「研究・開発」で、その具現化が「事業化」になるのだと思います。

天方さん図2

(引用:https://www.druckerforum.org/blog/the-ecosystem-of-wicked-problems-by-christian-sarkar/

植田:当社は3年前から民間事業展開を開始し、この事業を伸ばすことに注力してきました。当社が行っている事業は「公共事業」でも「民間事業」でも目指す方向性として「社会課題の解決」というのは同じです。当社の研究所が行っている内容も公共事業への展開が期待できるものが多いですし、これまで当社が行ってきた「公共事業」と全く別のものということではありません。

天方:私たちが研究・開発している「技術」は「公共用」「民間用」と区別するものではなく、それぞれにふさわしい方に適切にパスしていくことが重要だと思います。

山本:組織にも適切な役割分担があるということですね。これまでのご意見を聞いて「変化しなければならない」タイミングに来ていることは間違いないのだなと感じました。最初の問いに戻りますが「なぜ、研究・開発が必要なのか」というのは、こういった変化に対応する必要が生まれてきているのもひとつの要因なのでしょうね。

植田:若手社員はこれから先の仕事に不安を持っていることも多いのではないでしょうか。私も入社当時は色鉛筆で図面に着色したり、紙を貼ったりといった作業から始まりましたが、いまはデジタル化が進み、作業ひとつにとっても大きく変化しました。「建コン」と一口にいっても取り扱う分野も刻一刻と変化し、社会情勢も変化し、天方さんの言っていた不確定性も変化しました。だからこそ、何年も先を見通して柔軟に対応できる会社に成長しなければならないと思います。その準備をしておくことが重要で、そのことに対して「反対」という人はいないと思います。私はその最たるものが「研究・開発」の取組みではないかと思っています。

◆研究・開発テーマを設定するために重要なこと

大林:「研究・開発」を進めていくといった必要性の認識は図れたと思うのですが、そのうえで会社として取り組んでいく「テーマ設定」が重要になると思います。テーマを設定するうえでポイントとしていることは何でしょうか?

天方:研究所が発足して4年目に入りました。はじめはテーマを設定するうえで最も検討したのは「ニーズ」です。私が関わってきた発注者の抱える課題を解決することからスタートし、これまで出来ていなかったものを出来るようにするにはどうすれば良いかということを検討しました。しかし「課題」といっても発注者から要望のあった課題だけに対応していれば良いのではなく、広い視野で見た社会課題の「ニーズ」を汲み取っていかなければならないということが分かってきました。当社ではこの「ニーズを汲み取る」仕組みが組織として十分に整っていないので、改善していかなければと思います。そして集まってきた「ニーズ」に対して、どのように手をかけていくか判断していく力を養っていかなければならないと思っています。

◆これまでに培ってきた技術で、更なる貢献を目指す

植田:私たちが行ってきた「社会課題の解決に資する建コン業務」というのはもっと他の分野でも応用・貢献できると思います。これが民間への事業展開をする上での「攻め」の姿勢です。一方で会社を経営しているという観点で考えると公共事業に依存している事業体というのは持続可能な経営をするうえで弱点とも言えます。持続可能な経営をしていくうえで健全なポートフォリオをどう組み合わせていくかという「守り」の姿勢も重要だと思います。

山本:私たちがこれまで培ってきた建コン業務が形を変えて社会貢献につながると聞くと、とても馴染みやすいです!海外分野でも何かやりたいですよね!

岩合:やってみたいです!民間と政府で一緒に社会を豊かにしていきましょうという流れは日本だけではなく、世界でも同じだと思います。民間へのアプローチが出来るようになると、いままで関わったことのない分野へも事業を展開できるのではないかと、わくわくします。

山本:逆にそれを日本でも活かせるかもしれませんしね。

天方:事業のやり方は多種多様にあると思うのです。SaaSをやったりコンサルをやったり、それぞれの事業特性を見極めて事業計画を立てることが大切だと思います。

植田:下図は「Jカーブ」といって新規事業がスタートアップする時に一般的に辿る成長曲線なのですが、途中にへこむ時期があるのです。私たちが従来からやっている建コン業務だとへこむということはなく、この考えは許容しにくい部分がありますが、当社はこれまで培ってきた建コン業務があるからこそ、このへこみに耐えることができ、社内で新しい事業を作れるのだと思っています。

植田さん図

(引用:https://leverage-share.com/study/post-2904/

大林:まだまだ議論をしていたいですが、そろそろお時間となりました。今回私たちが議論していたなかでの共通認識として「社会課題を解決したい」という熱い気持ちをもって仕事をしているということが分かりました。アプローチは違ってもその想いに変わりはなく、あらゆる方法で社会に貢献するために切磋琢磨しています。その方法のひとつに「研究・開発」があり、私たちは社会課題を解決する新しい解を生み出すために尽力しています。これから先も、より良い未来のためにみんなで頑張っていきましょう!