【スペシャル対談】北陸新幹線金沢・敦賀間ー開業によせてー
こんにちは!note編集部の小林です。
2012年に着工した北陸新幹線の金沢・敦賀間が3月16日に開業しました。この開業により、東京・福井駅間の所要時間は最短で2時間51分と、これまでより、30分あまり短縮されます。
当社は、石川県の手取川橋りょうや小松木場潟高架橋、福井県の竹田川橋りょうや九頭竜川橋りょうで詳細設計、また雪害対策となる散水消雪設備※を17カ所に設計するなど、多くの業務に携わりました。
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このたびの開業によせて、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以降、JRTT)の西さんと、当社の国内事業部の阿部さんとのスペシャル対談をお届けします。
北陸新幹線長野・金沢間をはじめ、東日本大震災で被災した三陸鉄道の復旧事業など、お二人は20 年ちかくにわたり、鉄道という日本の動脈をつくってこられました。北陸新幹線金沢・敦賀間の工事では、JRTT 福井鉄道建設所の所長として携わられた西さんをお迎えし、お二人の視点から開業への思いを語っていただきました。
国土強靭化の一翼を担う
西さん: 2024 年 3 月、北陸新幹線金沢・敦賀間が開業しました。この区間の工事前、まさに設計段階の真っ新なときから私は携わっていますので、「ようやくここまできたんだな」と実感しています。
阿部さん:福井県にとってこの新幹線開業はまさに悲願、期待感は相当なものだと思います。北陸新幹線長野・金沢間が 2015 年に開業したとき、多くの観光客が石川県に行きましたよね。
西さん:そうした観光への期待感はもちろんですが、将来、北陸新幹線は大阪までの延伸が計画されており、それによりリダンダンシーの確保につながります。
阿部さん:2024 年 1 月に発生した「令和 6 年能登半島地震」でも、金沢駅までの北陸新幹線は比較的すぐに運転が再開され、「強い新幹線」が国土強靭化の一翼を担っているということを感じました。
「日本初」への思い
西さん:今回開業した区間は平地が多く、トンネルよりも橋梁・高架橋が多く採用され、その割合は7 割弱になります。
阿部さん:河川橋りょうの工事は、水が少ない河川の非出水期に行なわなければなりません。また北陸は雪の多い地域で工事期間が限られます。そうした制約の中でも、今回「日本初」への挑戦をさせていただきました。
西さん:その業務が、八千代エンジニヤリングさんが詳細設計をされた、福井県に位置する「九頭竜川橋りょう」と「竹田川橋りょう」です。九頭竜川橋りょうは、新幹線橋りょうの両脇が道路橋という、新幹線では日本初となる鉄道橋と道路橋の一体橋です。もともとこの地域では、人口増加に伴う渋滞緩和のため、道路ネットワークの整備が求められていました。鉄道橋と道路橋を2つの橋をつくるとなると、当然、それぞれに環境負荷やコストが発生してしまいます。そうした課題解決を図るべく、一体橋という新たな取り組みに挑みました。
阿部さん:設計においては、鉄道では「鉄道構造物等設計標準」、道路では「道路橋示方書」を満たす 2 つの設計をする必要がありました。一体橋ということで、柱やケーソン基礎(コンクリート構造物の下部にある部材)の大きさは通常の 3 倍の幅がありますが、新幹線の両側に県道橋を通す河川渡河部のルートを実現させたことで、鉄道と道路の全体事業費として約 30 億円の縮減を図ることができました。
西さん:さらにこの地域の九頭竜川は、絶滅危惧種の淡水魚「アラレガコ」など多様な魚類が生息する環境が「アラレガコ生息地」として天然記念物に指定されています。そうした豊かな自然環境への配慮も必要な河川に大規模な構造物をつくるため、計画段階から非常に検討項目が多く、また関係者も多い業務でした。
阿部さん:通常、こうした業務では関係機関協議が 10 回程度なのですが、本業務では 50 回を超える協議がありました。地域の環境に関わる有識者をはじめ、国指定天然記念物を管轄する文化庁にも行きましたし、道路を管轄する福井県にも赴きました。関係者調整や協議が多く、これまでにない経験をすることができました。
西さん:また竹田川橋りょうのなかでも第 2 竹田川橋りょうは、支間長が 125mを誇る鉄道ラーメン(上部構造と下部構造が一体となった)橋で、こちらも日本初への挑戦でした。
阿部さん:橋が竹田川を跨ぐためには、どうしてもこの支間長が必要でした。それ以外には竹田川を移動させることしかありませんでしたが、それは許されません。また竹田川は河川幅約 40m(将来計画約 120m)の蛇行した形状で、その制約の上で、今までにない規模の橋脚基礎の大きさや位置、柱の形状などを決めなくてはならず、非常に難易度の高い業務でした。
西さん:そのなかで、「日本で最長」という挑戦を共有して、皆で取り組んでいきたいという思いでした。
阿部さん:そうした「思い」をかたちにして、実現していくことは醍醐味でしたし、そしてなにより、この業務を通して、西さんをはじめ JRTT さんのさまざまな方とお話することで、新しい知識を机上だけでなく対話を通じて学ぶことができたことは、楽しくもあり、非常に重要だと感じました。
鉄道の「その先」へ
阿部さん:北陸新幹線は、敦賀から大阪まで延伸することが予定されています。またインド高速鉄道など、海外への技術移転もこれからより進んでいくと思います。さらに災害復旧や維持管理など、鉄道の領域はまだまだあると思います。そうしたなかで、これからわれわれが世代交代したとしても、JRTT さんというリーダーがいる限り、鉄道技術者は育っていくはずですので、末永くお付き合いいただければ幸いです。これからもご指導のほど、よろしくお願いします。
西さん:今回の工事では、有識者を含め多くの関係者との関わりがありましたが、今後はより広く、より深くそうした対応が求められてきます。DX やカーボンニュートラルをはじめとしたさまざまな視点も必須になります。そうした中で、設計図をつくるだけでなく、多くの関係者の理解を得るための知識や技術が求められてきますので、ぜひ八千代エンジニヤリングの皆さんには、そうした活躍もしていただき、鉄道の「その先」に向けて、引き続きご協力いただきたいと思います。