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GX推進法成立から1年!国内外におけるカーボンプライシングの動向~オンラインセミナー報告~

こんにちは、note編集部の鈴木です。

これまでサステナビリティNaviではサステナビリティに関する最新情報をお伝えすべく、さまざまなテーマでウェビナーを開催してきました。しかし、当社が取り組んでいる環境課題は多岐にわたるため、そのすべてを十分に発信できずにいました。

そこで、サステナビリティNaviでは当社の取り組みのなかでも、サステナビリティと関係が深いエネルギー関連の部署と合同で、8月1日(木)に「GX推進法成立から1年!国内外におけるカーボンプライシングの動向」と題したウェビナーを開催しました。
今回はその内容の後半部分である、カーボンプライシングの動向について、ダイジェストでお届けします。

なお、前半部分では企業におけるGHG排出量の算定方法や削減方法について解説しましたが、今回は割愛させていただきます。ウェビナー内容をすべて網羅しているわけではありませんが、以下の記事を参考にしてください。


カーボンプライシングとは?

まずカーボンプライシングについて、定義をご説明します。
カーボンプライシングとは、企業などが排出するCO₂に価格をつけ、価格インセンティブによって排出削減を誘引しようとする仕組みのことです。

カーボンプライシング制度について

すでに世界中でカーボンプライシング制度の導入が進んでおります。ここでは同制度の海外の導入状況について概観し、炭素価格の国別で比較します。

海外の導入状況

出典:World Bank, State and Trends of Carbon Pricing 2023

各国、排出量取引制度なのか、炭素税なのか、それとも両方なのか。国によって選択は異なりますが、すでに多くの国が何らかの形で、企業が排出するCO₂に価格を付ける、という動きをしていることが上記の図からもわかります。

紫色が「排出量取引制度と炭素税の両方を実装または実装予定」の地域となります。
特に、ヨーロッパや北米は動きが活発ですが、実はアジアにおいてもかなり進みつつあります。

炭素価格の国別比較

出典:World Bank, State and Trends of Carbon Pricing 2023

こちらは各国の炭素価格の比較です。
日本はまだカーボンプライシングが始まったばかり(現在は試行期間中)なので、上図の下から5番目と値段はかなり低く設定されています。
一方でヨーロッパでは、CO₂のトンあたり60~90ドルに達している国もあります。仮に現在のレートが150円とした場合、9,000円から13,500円といった価格帯です。

もし皆さまの事業所で排出されているCO₂排出量がおわかりでしたら、計算してみてください。仮にヨーロッパ基準の炭素価格で、排出量の全量に課金されたらどうなるでしょうか。どれだけインパクトがあるか、イメージできると思います。

日本におけるGX政策

日本のGX政策のイメージ
出典:グリーントランスフォーメーションの推進に向けて、経済産業省 環境経済室、2023年5月

日本は、EUをしのぐ150兆円規模のGX投資を今後10年間で引き出し、産業育成を図るとしています。
先進分野の産業育成で海外に負けないようにするという目的があります。
それに向けて企業がGX投資をせざるを得ない環境を作る必要があります。具体的には、カーボンプライシング制度、つまり企業が排出する炭素に課金する制度です。

排出量取引制度について

排出量取引制度とは、企業ごとに排出量の上限(排出権/排出枠)を割り当て、それを超過する場合は他社から排出権やカーボンクレジットを買い取って補填することを求める制度です。

基本的な仕組み

カーボンプライシングの概念

まず、排出量取引制度とはどのようなものか説明します。
最初に、国や運営機関から企業に排出権・排出枠が割り当てられます。ここでもし、CO₂排出量実績が排出権を超えた場合、当該事業者は入札を行い、排出権内に収めた事業者から、排出権を買い取って補填する必要があります。

カーボンクレジットとの関係

カーボンクレジットとの関係

次に、カーボンクレジットと排出量取引制度の関係について説明します。
前述のとおり、事前に割り当てられた排出権を超過した企業は、超過分を他社の排出権を買い取って補填します。

カーボンクレジットは、この排出権との互換性が認められることがあります。つまり、このケースではクレジットと排出権、どちらを購入しても問題ありません。

証書との関係

証書との関係

一方で、証書にはカーボンクレジットとの互換性が認められていません。
「では排出量取引制度とは関係ないのではないか?」と感じるかもしれませんが、むしろ関係が深いです。

グリーン電力証書やFIT非化石証書は、排出量そのものを減らすために使われます。そもそも排出権を超えないようにするための方法が証書です。

つまり排出量取引制度において、排出権の超過や達成の判定を受ける前の、上流部分で証書が大きく関係するのです。クレジットも同様の使われ方をすることもあります。

なお、上図のScope1,2については本ウェビナーの前半部分でも解説しました。詳しくは以前のnote記事「SBTi-FLAGの目標設定手法とは」でご紹介していますのでそちらもご覧ください。

まとめ

  • 日本におけるカーボンプライシング制度は本格稼働に向けて制度設計中であり、詳しいルールについては今後も議論を注視していく必要がある。

  • クレジットや証書の活用について、カーボンプライシング制度により、さらに需要が高まる可能性がある。

講演者情報

八千代エンジニヤリング株式会社 喜多川さん

前職は企業の環境コンサルタント。現在は官民連携による地域の脱炭素化をコンサルティング・事業の両面で推進中。
地域の脱炭素・再生可能エネルギー普及計画の策定、官民共同出資による新電力「株式会社なんとエナジー」設立、官民連携によるグリーン電力証書事業を立ち上げなどに従事。農学博士。