見出し画像

TNFD開示に対応!推奨ツール(ENCORE、IBAT)の概要と使用方法~オンラインセミナー報告~

こんにちは、note編集部の鈴木です。

当社は、昨年11月にオンラインセミナー「TNFD v1.0の全体像や分析・開示手法を解説」を開催し、TNFDの全体像や分析・開示手法について解説しました。

上記に引き続いて、今回は7月16日(火)に「TNFD開示に対応!推奨ツール(ENCORE、IBAT)の概要と使用方法」と題し、ウェビナーを開催しました。

本セミナーでは、TNFDにおける分析において使用することが推奨されるENCOREとIBATについて、それぞれの概要と分析内容を具体的にご説明しました。また、2024年7月に大幅にアップデートされたENCOREの更新点を解説しました。今回の記事では、本セミナーの内容をダイジェストでお届けします。


TNFDとLEAPアプローチ

TNFDについては、昨年11月に実施したオンラインセミナーの記事でも説明していますが、今回紹介する2つのツールの活用が推奨されていますので、簡単にご説明します。

TNFDとは

近年では、自然共生社会を目指すため、生物多様性の損失を食い止めて回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の動きが国内外で急速に高まっています。

こうした背景から、2023年9月には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)から最終提言として「TNFDフレームワークv1.0」が公開されました。TNFDでは、LEAPアプローチという分析手法の採用が提案されており、この手法によって、企業の事業活動による自然への依存と影響、それに伴うリスクと機会を特定し、開示することが求められています。

LEAPアプローチとは

LEAPアプローチは、Locate、Evaluate、Assess、Prepareの各フェーズの頭文字をとったもので、状況に応じて柔軟に活用することが推奨されています。
Locateに該当する「自然との接点の発見」や、Evaluateに該当する「依存と影響関係の評価」で使用を推奨されているツールが、今回ご紹介するENCOREとIBATです。

ENCOREについて

ENCOREは、2024年7月に大幅にアップデートされ、分類の更新や評価方法の改善など主に7つの更新点があります。ENCOREの概要とTNFDでの活用、また7月の更新点についてご説明します。

ENCOREの概要

ENCOREとは、「Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure」の頭文字を取ったもので、組織が自然関連リスクへのエクスポージャー(感応度)を調査し、自然への依存と影響を理解するために役立つ無料のオンラインツールです。主に、企業、金融機関、規制当局の利用を想定しており、生物多様性と生態系サービスへの潜在的な依存と影響関係を評価することができます。このツールは、Global Canopy、UNEP FI、UNEP-WCMC といった諸機関によって維持管理され、継続的に改善されています。

TNFDでの活用

ENCOREは、経済活動ごとに自然にどの程度依存し、影響を与えているのかを、ツールを用いて評価することができます。TNFDのLEAPアプローチにおけるEvaluateフェーズでは、E1からE4の4項目(上図参照)がありますが、ENCOREを用いることで、依存と影響関係のマテリアリティについて評価することが可能です。

ENCORE 2024年7月の更新点

2024年7月に大幅なアップデートがあり、産業分類と生態系分類の更新、マテリアリティ評価方法の改善など、主な更新点は以下の7つです。

1,産業分類が、GICS(世界産業分類基準)に基づいた92の生産プロセスから、ISIC (国際標準産業分類)に基づいた271の経済活動に拡大された。

2,生態系サービスが、SEEA(環境経済勘定)の分類に合致し、文化的サービスも追加された。

3,経済が自然にどのような影響を与えるのか、より明確化された。

4,自然資本が、IUCN Global Ecosystem Typology 2.0に沿った生態系タイプに分類された。

5,依存・影響関係に関するデータについて、最新の科学的研究などに基づいて更新された。

6,マテリアリティ評価の方法が改善され、可能な限り定量的評価が用いられている。

7,バリューチェーンにおける、間接的な依存・影響関係も確認できるようになった。

ENCOREの操作フロー

こちらでは、ENCOREの操作と評価結果を取得するまでのフローをご紹介します。
上記は7月10日時点での操作フローとなりますが、大まかな作業としては、ENCOREを操作してデータをダウンロードし、エクセルにて評価結果の確認・まとめを行なう流れとなります。

なお、今回のセミナー後にENCOREの運営側から、今年の後半にサイトの更新を予定していると連絡がありました。

IBATについて

IBATの概要

IBATとは「Integrated Biodiversity Assessment Tool」の頭文字をとったツール名で、「生物多様性統合評価ツール」のことを指します。位置情報を入力することで、サイト(拠点)周辺が絶滅危惧種や重要な保全地域に近接しているかどうかを評価することが出来るWebツールです。

自社の操業位置と、保護地域や生物多様性重要地域(KBA)などの生物多様性にとって重要な地域との近接性や、種の絶滅リスクなどを把握することによって、生物多様性の重要性を確認することが可能です。
IBATツールは、一部の機能が有料となっていますが、ユーザー登録を行えば基本的な機能は無料で使用できます。

TNFDでの活用

IBATは、直接操業やバリューチェーンなどの活動地域において生物多様性などの観点から脆弱な地域を、ツールを用いて評価することができます。TNFDのLEAPアプローチのLocateフェーズでは、L1~L4の項目(上図参照)がありますが、IBATを用いることで、L2からL4の分析、評価が可能です。また、直接操業やバリューチェーンのなかで、生物多様性などの観点で脆弱な地域(優先地域)を抽出することができます。

IBATの操作フロー

こちらでは、無料プランで利用可能な操作と評価を想定したフローをご紹介します。手順を大まかに分けると、事前準備とIBATでの操作の2つとなります。
IBATは拠点の位置による評価を行うため、まず事前準備として、拠点住所の緯度・経度情報などが必要となります。次に、IBATでの操作ですが、アカウント作成後のフローは上図のとおり7つの手順があります。

さいごに

当日ご参加いただきました皆さま、ご質問をいただいたり、アンケートのご協力をいただいた皆さま、本当にありがとうございました。以下に一部ですがQ&Aを掲載しております。

この記事を読んで気になった方は、ぜひサステナビリティNaviよりお気軽にご相談ください。


登壇者概要

これまで官公庁を対象に、道路整備に伴う生活環境や自然環境の調査、環境影響予測に従事。現在は、TNFD開示支援などのサステナビリティコンサルタント業務に従事し、SBTNの開発プログラムにも参加。

大学院で河川に関わる農業土木を専攻。現在は、水リスク評価支援やTNFD開示支援などのサステナビリティコンサルタント業務に従事。