サステナビリティコンサルタントの仕事とは?直撃インタビュー【前編】
こんにちは!note編集部の鈴木です。
最近、「サステナビリティ」や「SDGs」や「ESG」といったキーワードをよく耳にしますよね。地球温暖化など深刻化する自然環境の問題に対応するため、企業活動においても、環境に配慮した取り組みが必要不可欠となっています。
当社は、企業による環境保全活動をサポートするため、「サステナビリティNavi」というコンサルティングサービスを提供しています。
そこで、今回は当社の民間企業向けサステナビリティコンサルティング事業の部署に所属する気候変動・水リスク・生物多様性分野を専門とするコンサルタントの皆さんにお集まりいただきました。
前編ではサステナビリティに関する基本的なことから、サステナビリティの重要テーマ、コンサルタントの需要や将来性をお伝えします!
サステナビリティとは?
―まずは、改めてサステナビリティとは何なのか。私のような素人にもわかるように説明して欲しいです。
霜山さん:サステナビリティとは、日本語では「持続可能性」と訳されるように、「環境・社会・経済などが将来にわたって適切に維持・保全され、発展できること」を意味します。
1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」が発表した報告書で「Sustainable Development(持続可能な発展)」という言葉が使われたことにより、広く知られるようになりました。
近年では共通価値の創造(CSV)という文脈で企業活動にも環境を含む社会課題の解決を組み込むという考え方が主流となりました。そのため、企業はサステナビリティに関する情報の開示が求められるようにもなっています。
サステナビリティとSDGs、ESGの違いは?
ーサステナビリティに関連して、SDGsやESGという言葉もよく聞きますが、その違いは何なのでしょう?
加藤さん:SDGs(Sustainable Development Goals)は持続可能な開発目標であり、2015年9月の国連サミットにおいて、参加した193カ国全会一致で採択された、2030年までに達成すべき世界共通の目標です。「経済」「社会」「環境」に関する17の目標と、その目標を達成するための169のターゲットにより構成されています(※1)。
柳沢さん:SDGsは、MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)の後継の目標ですよね(※2)。サステナビリティは経済、社会、環境の持続可能な発展を目指すという考え方で、その具体的な目標を示したのがSDGsとなります。
ーSDGsとESGの違いについても教えてください。
加藤さん:SDGsは国際社会や国家間で合意された目標であるのに対して、ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとった略称で、投資活動や経営・事業活動を指す言葉です(※3)。ESGは投資の分野でよく使われますね(ESG投資、ESG金融など)。
サステナビリティの重要性
ーありがとうございます。
共通価値の創造(CSV)の観点から、企業はサステナビリティに関する情報の開示が求められているというお話がありましたが、なぜこれほどまでにサステナビリティが重要視されてきているのでしょうか?
中野さん:それは、「地球の限界」(プラネタリーバウンダリー)が近年広く認識され、このまま何の対策も講じなければ、将来世代の生活基盤が脅かされることが世界の共通認識となってきたためです。現在の私たちの経済活動は製品や食料品の生産量を上昇させ、生活を豊かにしますが、その副作用として資源の減少・自然環境の悪化を招きます。
資源の効率的な使用、廃棄物の削減、サプライチェーンの透明性の向上などを通じて、企業は環境へのネガティブな影響を軽減する責務を負っています。
霜山さん:さらに、顧客や投資家をはじめとする人々のサステナビリティへの意識が高まっていることも、忘れてはならないポイントです。
今や環境に配慮した製品やサービスを提供しない企業は顧客に見放される時代になりました。また、先ほど企業の情報開示の話をしましたが、投資家からの目線も以前よりも厳しくなっていると言えるでしょう。
サステナビリティコンサルタントが企業に求められる背景
ー企業が存続するためには、環境に配慮した事業を行うことが大切なのですね。サステナビリティコンサルタントが必要とされる背景についても教えてください。
霜山さん:先ほど説明した通り、社会の環境問題への認識が高まり、企業は環境への配慮が求められる一方で、企業には以下のような課題があると思います。
そのため企業は、サステナビリティコンサルタントの知識と専門性を必要としています。
サステナビリティコンサルタントの需要
ーサステナビリティ分野への注目が高まり、大手コンサルティングファームも次々と専門部署を設立しています。市場の需要は増加していると感じていますか?
霜山さん:世界のサステナビリティコンサルティングの市場規模は2022年の約88億ドルから2032年には約137億ドルまで成長すると予測されています(年平均の成長率は4.5%)(※4)。日本においてもサステナビリティの意識が高い企業が年々増えており、コンサルタントの需要も増えていくと考えられます。
加藤さん:企業は「グリーンウォッシュ」とされる表面的な取り組みではなく、持続可能性を本質的に追求し、実効性の高い戦略を求めています。企業の環境課題の解決のために、自然科学の専門分野に関する知識や、データに基づいたアドバイスなど、サステナビリティ分野のコンサルティングが多くの企業から注目されていると感じています。
サステナビリティコンサルタントのテーマ
ー皆さんはサステナビリティコンサルタントとして、どのようなテーマや分野で活動しているのでしょうか?
佐藤さん:私たちは、企業が直面する水リスク、気候変動、生物多様性の保護、資源の循環など、幅広いテーマに取り組んでいます。
サステナビリティコンサルタントの仕事を紹介!
ーここからは、サステナビリティコンサルタントの仕事を紹介したいと思います。ざっくり言うと、どんなお仕事ですか?
佐藤さん:言葉通り、サステナビリティ分野のコンサルティングを行います。当社はサステナビリティに関連する問題に対して、算定・評価、分析、戦略・方針策定、目標設定、対策検討、情報開示まで一貫した支援サービスをプライム上場企業を中心に提供しています。
求められるスキルや人物像とは?
ーお話を聞く限りでは求められるスキルも高そうです。どのような経歴やスキルが求められるのでしょうか?
柳沢さん:特定の経歴よりも、柔軟な思考能力や新しい挑戦に積極的な姿勢が重要ですね。指針として用いる資料やガイダンスはグローバルで公開されており、企業担当者も含めて誰でも見ることができます。それでも、企業の方はあえてお金を出して業務を依頼してくださっているので、その分、早く質の良いアウトプットを残すとともに、企業の課題感に合った+αの対応で付加価値を付けた検討をすることが重要だと思っています。
そのためにも、企業の課題に合わせて柔軟な考え方ができる人、世の中の新しい動きに対して敏感で、自分なりに解釈を考えたりサービスを開発したりと新しいことに挑戦するのが好きな人は、向いているかもしれません。
ー文系の方でも大丈夫でしょうか?
柳沢さん:実は、文系か理系かはあまり関係ありません。重要なのはガイダンスを読み解く力や、難解な内容を分かりやすく論理的に企業担当者に説明できる能力だと思います。環境の分野に興味があれば知識面のキャッチアップにそこまでの壁はありません。
サステナビリティコンサルタントとしてのキャリアパスと将来性
ーサステナビリティコンサルタントとしてのキャリアと将来性についてはいかがでしょうか?
中野さん:3つポイントがあると思っています。
「環境・サステナビリティ分野の最先端で働くことができる」というのが1つ目のポイントです。
2つ目のポイントは、「科学的な調査・解析技術を用いて、課題解決に貢献することができる」ことです。
3つ目は「多様な分野を学び、それを仕事に活かすことができる」点です。最初から何でもできる人はいませんし、この分野は次々に新しいテーマが出てくるので日々勉強です。
霜山さん:サステナビリティコンサルタントのキャリアはチャレンジングであることは間違いないですが、基本的には「顧客の課題解決に向けた業務」がメインになります。その他に、サステナビリティに関する国際的なルール作成に携わる業務(SBTs for Nature)もあります。
後編に続く
前編に登場した主なコンサルタントの紹介
2017年新卒入社。
大学院では水文学を専攻。
入社後、地方自治体の水資源保全計画の策定のコンサルティングに従事。現在は、TNFDやSBTNの他、水リスク評価、水目標設定、環境方針策定、GHG算定などの支援を中心に、チームをリード。
SBTN開発プログラムやTNFDフォーラムに当社の代表として参加。
2021年新卒入社。
大学院では水文学、熱力学を専攻。入社後、SBT設定支援、水リスク評価、CDP回答支援(気候変動、水セキュリティ)に従事。SBTNの開発プログラムにも参加。
〈学会・受賞歴など〉
日本地下水学会 若手優秀講演賞受賞(2022)
日本地下水学会 行事委員
2015年新卒入社
大学院では地質学・古環境変動学・進化古生物学専攻。入社後、国交省など官公庁向けに地下水資源調査業務やコンサルティング業務に従事。
現在は、水リスクマネジメント業務および水リスク評価、 CDP回答支援(気候変動、水セキュリティ) 、TNFDなどのサステナビリティコンサルティングに従事。
<保有資格>
技術士(応用理学)
測量士補
<学会・受賞歴など>
日本応用地質学会所属
2023年中途入社。
大学院では生態系管理学を専攻し、生き物の生息地としてのグリーンインフラについて研究。
前職では、官公庁を対象に、道路整備に伴う生活環境や自然環境の調査、環境影響予測に従事。
現在は、民間企業を対象としたサステナビリティコンサルタント業務に従事し、SBTNの開発プログラムにも参加。
<学会・受賞歴など>
日本生態学会所属
2020年新卒入社
大学院では海洋の環境微生物学を専攻。入社後は、水リスク評価やCDP回答支援(水セキュリティ、気候変動、森林)、SBT認定支援などのサステナビリティコンサルティングに従事。
SBTN開発プログラムやTNFDフォーラムにも参加し、民間企業の対応支援を行う。
<保有資格>
潜水士
自然再生士補
【参照ページ一覧】
※1.朝日新聞デジタル:サステナビリティとSDGsの違いは?ESGやCSRとの関係性、事例も紹介
※2.JICA:MDGsの概要と8つの目標
※3.内閣府:ESGの概要
※4.Businnes Research Insight:Sustainability Consulting Market Size, Share, Growth, Industry Growth by Type