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サーキュラーエコノミー(循環型経済)の事例について~飲料業界をモデルに、サーキュラーエコノミーについて解説~

こんにちは!note編集部の藤井です。

前回「サーキュラーエコノミーの事例について~飲料業界をモデルに 3R(Refuse、Reduce、Renew)について解説~」では、サーキュラーエコノミー分野の専門家である柴田さんに飲料ビジネスにおける「5R(ファイブアール)」Refuse(リフューズ)、Reduce(リデュース)、Re-use(リユース)、Repair(リペア)、Recycle(リサイクル)の中のRefuse、日本人になじみの深い「3R(スリーアール)」Reduce(リデュース)、Re-use(リユース)、Recycle(リサイクル)の1つであるReduce、それとRenew(リニュー)について解説いただきました。前回に引き続き今回は、3Rの残りの2つであるRe-use、Recycleについて解説いただきます。

図1:オランダのアムステルダム市で掲げる10R
(The Circular Economy Programme in the Amsterdam Metropolitan Area)を基に筆者が意訳

過去記事はこちらをご覧ください。

プロフィール


柴田さん(サーキュラーエコノミー分野の担当)
業務内容:サーキュラーエコノミー分野の事業検討・開発
経  歴:2007~2021年 グローバル企業 環境部署の責任者として従事
     2021年9月 八千代エンジニヤリング入社
     2023年7月 開発推進部配属
     サーキュラーエコノミー分野の事業検討・開発を担当

1.Re-use(以下、リユース)

飲料関連でリユースと言いますと、ガラス瓶を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。50代以上の方であれば、子どものころにガラス瓶を近所の商店に持っていき、5円なり10円なりの返金を受けた方もいらっしゃるかと思います。

ペットボトルも、海外の一部の国ではリユースが存在しています。しかし、日本では、一部のウォーターサーバー用を除くと普及していません。また、ガラス瓶も減少の一途をたどっています(なお、ガラス瓶にもリユース用と使い捨て用があります)。

リユースを実施するには、リユースのためのサプライチェーンを構築する必要があります。容器を回収し、それらを選別し、飲料工場まで戻す必要があります。実はこの点がかなり難儀です。瓶などの容器は、メーカーにより、更には同じメーカーであっても製品により形状やサイズが様々です。メーカーに戻すには、工場に戻す前に選別を行う必要があります。回収拠点から工場まで、少量を都度トラックで運搬していてはコストが膨大になりますし、エネルギー消費に伴いCO2も多量に排出されてしまいます。工場に戻ってからも、洗浄工程などが必要となります。

日本において、ペットボトルのリユースが検討されたことがありました。飲料工場と市場が100キロメートル圏内で完結しないとむしろ環境負荷が高まることが明らかになり、その後、リユースを求める声は静まりました(環境省「ペットボトルを始めとした容器包装のリユース・デポジットなどの循環的な利用に関する研究会」中間取りまとめ2009年8月)。
リユースは、CO2の低減など条件が揃えばとても良い方策です。リユースと言うだけで賛美する風潮が一部に見られますが、中身を精査して、条件が揃う範囲で実施することが良いと考えます。

2.Recycle(以下、リサイクル)

ペットボトルは、使い捨ての象徴、海洋プラスチックごみの象徴として取り上げられることが多いです。一方で、リサイクルの優等生と言われることもあります。

図2:主要な容器包装の日本におけるリサイクル率(2022年度)
3R推進団体連絡会資料を基に筆者作成

では、なぜペットボトルはリサイクルの優等生なのでしょうか。飲み終わった後にリサイクルされるまでの4つのフローごとにポイントを記載いたします。

図3:リサイクル簡易フロー

(1)消費者による排出

本記事をお読みの皆さまも日常的に経験されているのでご理解いただきやすいかと思います。

  •  ペットボトルをペットボトルとして認識しやすいこと

  • 分別が容易であること(キャップとラベルを取り除く、中味液を残さない)

  • 排出拠点が身近に多いこと(自治体による回収、店頭や自販機脇での回収など)

例えばラベルのように、分別を容易にするために、様々な工夫がなされています。ラベルには蒸気でボトルに圧着させるもの(シュリンクラベル)と糊で巻き付けるもの(ロールラベル)があります。シュリンクラベルにはミシン目が入っています。ロールラベルの糊はリサイクルを阻害することがないように規格が決まっています。いずれも業界団体であるPETボトルリサイクル推進協議会が定める「指定PETボトルの自主設計ガイドライン」(https://www.petbottle-rec.gr.jp/guideline/jisyu.html)で規定されており、国内企業はガイドラインを順守しているので、消費者が製品やメーカーの違いにより迷うことなく容易に分別が可能なのです。

(2)回収

モノにもよりますが、一般に、リサイクルにおいて最もコストが掛かるのが“回収”になります。積載率が低い状態でトラック輸送していては輸送コストが膨大になります。また、回収拠点から次の工程(一般には選別工程)に運ぶ距離が長くても輸送コストが膨大になります。
皮肉めいて聞こえるかもしれませんが、回収コストを下げるためには、不要物が一定量まとまって排出されることが望ましいです。スーパーなどの店頭での回収は、個々のスーパーなどがコスト負担していますが、特定の拠点に不要物である飲み終わったペットボトルを集めているという意味では、社会全体の回収効率を向上させていると言えるかと思います。

回収コストを抑えるためには以下などの工夫が考えられます。

  • 店頭や事業所など特定の拠点に集める

  •   一定エリア内で回収を実施

  • 帰り便の活用や何かと一緒に運ぶ(ただし、廃棄物処理法などの留意が必要)

(3)選別・分別

回収された不要物は、一般には選別・分別のための工場に送られます。ペットボトルの場合、キャップやラベルが付いたままだったり、あるいはペットボトル以外のものが一緒に回収されていたりします。これらは “異物”となりリサイクル製品の品質を下げますので、選別・分別して取り除く必要があります。
ペットボトル以外のものが一緒に回収されてしまうのは残念なことですが、ペットボトルを選別・分別しやすいような工夫がいろいろ実施されています。例えばペットボトルは基本的にはポリエチレンテレフタレートという素材だけで作られていますが、ペットボトルが導入された当初は他素材との複合でした。
複数の素材で構成されるモノは素材ごとに選別・分別する必要があります。製品の品質を担保したうえで、素材の数を減らす、素材を(業界で)共通化する、分別を容易にする、などの工夫が望まれます。

(4)リサイクル品製造

ペットボトルの素材であるポリエチレンテレフタレートは、そもそもいろいろなモノに加工しやすい素材で、様々な用途が存在します。ただ、ここで強調したいのは、リサイクル品に市場ニーズがあるということです。
日本では、「分ければ資源、混ぜればごみ」というキャッチコピーが浸透しています。必要条件ではありますが、十分条件ではありません。リサイクル品に市場ニーズがなければ、そもそもリサイクル業者は取り扱いません。リサイクル品も“商品”なのです。リサイクル品が市場ニーズを持つには、

  • その素材が(バージン材かリサイクル材かに関わらず)ニーズがある

  • 品質が担保される

  • コストが適正

などの条件が揃う必要があります。(2)で回収コストに言及したのは、リサイクル品の価格に直結するからです

3.さいごに

リユースでもリサイクルでも、排出以降のフローや市場ニーズなど全体を俯瞰して最適なサプライチェーンを構築する必要があります。本記事および飲料業界の事例が皆さまの組織で扱うモノのご参考になれば幸いです。

【TOPICS】

当社は、静岡県浜松駅周辺の古紙回収拠点(こしのえき)で新プロジェクト「あつまれみんなの雑がみ(以下、あつがみ)」の実証実験を実施中です。

ごみ問題に関する当社の取り組みはこちらをご覧ください。